ちょっと前までゲイ向けチャットボーイをやっていました。
PCに接続したカメラからの映像を流しながらチャットするやつです。
客はポイントを買って、時間制で支払い。
チャットボーイも時間制でお金がもらえるという仕組み。
週末の夜遅い時間などは、待機すればすぐに客が入ってきます。
時給にすれば、なかなかの高収入でした。
客の目当ては、“若い子とチャットがしたい”なんてことより、“とにかく脱がせたい”ということ。
客の画面上の操作で、チップを渡すことができるのですが、チップで釣ったりしながら、とにかく脱がせようと必死になります。
そして、最終目的は大抵“射精”してもらうこと。
しかし、一度イってしまうとそこで終わり。
次の客が来ても、そう何度も射精できないので、こちらとしてはいかに時間を引っ張るかが勝負です。
僕には、数人常連さんがいました。
その中の一人で、気前のいいお客さんがいました。
いつも気前良くチップをくれ、長い無駄話も延々と付き合ってくれるラクな人です。
しかし、所詮は男(というかエロオカマ)なので、最後はエッチなことを求められます。
あるとき、焦らしながら焦らされながらで、僕が服を脱いでいき、最後の1枚になったときのことです。
すでに長々とチャットしていたのですが、僕はもっと時間を稼ぎたくて、無駄話を延々とタイピングしていました。
そこでふと「腹減ったよ~」と書き込んだら、「ピザでも取りなよ。チップ弾むから」と返してきました。
本当にお腹が空いていた僕は、「やったぁ!」とありったけの顔文字つきで書き込み。
すると、客はちょっと無茶な要求をしてきました。
「そのパンツも脱いじゃって、全裸でピザ受け取ってよ」
一瞬、僕は目を疑いました。
冗談じゃない。そんなことできるわけがない。
「いやぁ……。それは無理っす。恥ずかしいですよ~」
と返しますが、客は執拗に求めてきました。
「チップ弾むから」
との書き込みがあったかと思うと、PCから効果音が……。
客がチップをくれたときの音です。
何度も何度も……。
僕は、頭の中で金勘定をし、大いに迷いました。
今欲しいあの服が買えるかも、と。
「じゃあ、やってみようかなぁ。でもなぁ……」
と焦らしていると、客は延々チップをくれました。
「さあ、そろそろ頼んじゃおうよ」
僕は、宅配ピザのチラシを取り出し、適当に選んで電話でオーダーしました。
電話の様子は、マイクを通して客に聞こえているはずです。
僕の住むワンルームマンションは、玄関から部屋が丸見え。
PCデスクをベランダ側に置いており、カメラからはちょうど玄関が見える位置関係でした。
キンコン。
と、築年数の古いマンションらしい、昔タイプのインターフォンが鳴りました。
もちろん、客にも聞こえてるはず。
「おっ。来たね。さあ、パンツ脱いで受け取りいこうか」
PC画面を睨んで、僕は「はい」とだけ書き込みました。
全裸になって、財布を持ち、玄関へ向かいます。
恥ずかしい……。
しかし、今さら後に引けない。
いや、所詮会ったこともない人間との画面上の約束です。
いっそのことブラウザを閉じて、服を着ようかと一瞬の間に悩みました。
迷っていると、もう一度インターフォンが鳴り、僕は慌てて玄関を開けました。
どうにでもなれ、って感じです。
宅配に訪れたのは、同い年くらいの学生バイト風でした。
当然驚いた様子でしたが、僕の姿には触れず、マニュアルどおりの応対。
僕も、俯き加減で、なるべく平静を装って財布を探りました。
すると、運悪く1万円札しか財布にはありませんでした。
「すいません。大きいんですけど」
と、1万円札を渡します。
「はい。大丈夫ですよ」と、受け取ってくれましたが、お釣りの勘定には時間がかかっていました。
共用廊下に誰かが来ないかと、ビクビクしながらお釣りを待ちました。
まだ慣れていないのか、宅配の人は応対も覚束なく、お釣りの勘定にも苦労していました。
ずっと俯き加減だった僕は、改めて宅配の人の顔をきちんと見ました。
結構イケメンかも……。
やばい。僕は、こんな時に何を考えてるんだ。
と思う間もなく、僕の若い体は反応してしまいました。
ふと目が合い、そのまま相手の視線は僕の股間に注がれました。
今さら隠しても間に合わない。
僕は、照れ笑いを浮かべることしかできませんでした。
ピザを受け取って、PCの前に戻ります。
「どうしたの。勃起してるじゃん」
嬉々とした様子が、無機質な画面上の文章からも読み取れました。
その日以降、お客さんの要求はエスカレートしていきましたが、間もなく僕はチャットボーイをヤメました。
チャットボーイの全裸画像がネット流出していることを知ったからです。
一応、動画を保存することはできない仕組みでしたが、ちょっと知識があれば動画や画像で保存するのは至極簡単なこと。
なのに、僕はあまりに無警戒にこのバイトをしていたのだと反省しました。
ただ、変態なことを要求される快感は、残念ながら忘れられそうにありません。
このまま変な道に進まないことを祈るばかりです。
(ゲイ的羞恥・SM・体験談よりヒロトさんの投稿を引用させていただいております。)